ぺねとれ2世と仲間たち

どこかの音楽好き。哲学も好き。

チャイコフスキー交響曲第5番

チャイコフスキーの音楽と初めて出会ったのは、高校1年生の秋だった。チャイコフスキーの曲を聞いたことはそれまでもあったかもしれない。ただ、チャイコフスキーと出会ったと言えるのは、紛れもなくあの秋だった。初めて出会ったのは交響曲の第5番。すぐに親しみが持てた。でも私がチャイコフスキー交響曲第5番に惹かれたのは、ホルンのソロがあるから、金管楽器が目立つから、親しみやすいメロディーがあるから、そんな理由ではない。何か、切ないものを感じたのだ。4楽章を聞いたとき、彼は嘘をついている、と思った。今でもその考えは変わらない。彼は、何かと戦っている、そしてその戦いに彼は絶対に勝てない運命にある。この交響曲で、彼は夢を見た。自分が運命に打ち勝つ夢だ。しかし、そんなものはたかが夢だ。虚構にすぎない。彼は絶望していた。その絶望に耐えられなかったのだ。だから、夢を見るしかなかった。

 

私はこれまで、幾度か虚構の中に生きる人に会ってきた。彼らには共通して深い悲しみがあった。
 
チャイコフスキーの音楽にたまらなく惹かれ、共感するのは、彼が心の中に深い悲しみを持ち、戦いに負けた人間だからだろう。私は総じて、勝者よりも敗者が好きだ。